遺産の平均額と「争続」になる遺産額

自分の遺産が多いのか少ないのか、気になる人もいるかもしれません。
遺産の平均額はいったいどのくらいなのでしょうか。
そして、相続争いは遺産がいくらの時に起きているのでしょうか。

遺産の平均額は3,000万円前後
遺産の平均額について、2つの有名な民間調査があります。
それらによりますと、遺産の平均額は3,000万円前後になると言えそうです。
①MUFG資産形成研究所「退職前後世代が経験した資産承継に関する実態調査」(2020年)
これは相続を経験した50代・60代の5,800人余りを対象に資産承継について実態を調査したものです。
この調査によると、親から相続した財産額は平均3,273万円で、内訳を見ると不動産が48%でほぼ半分を占めていて、続く現預金の39%を大きく上回っていました。
「不動産は現預金と比べて分割するのが難しいことから、相続に向けた事前対策を講じたほうが望ましい」と分析されています。
また、親(被相続人)が保有していた財産総額の中央値は3,450万円でした。

→MUFG資産形成研究所「退職前後世代が経験した資産承継に関する実態調査」(2020年)
②いい相続「相続手続きに関する実態調査」(2024年)
この調査は株式会社鎌倉新書が運営する相続などの情報サイト「いい相続」が相続相談をした人など400人余りを対象に実施したものです。
この調査では、相続財産の全国平均は2,585万円でした。
また相続財産の内容(複数回答)を見ると、不動産がもっとも多く、続いて現金・預貯金、生命保険などという結果でした。

→いい相続「相続手続きに関する実態調査」(2024年)
この2件の調査から、遺産の平均額は3,000万円前後と言えそうです。そして内訳をみると不動産が大きな割合を占めていることがわかります。
相続税を支払うのは10人に1人
では相続税を支払う人はどのくらいいるのでしょうか。
国税庁のデータによると、2023年の課税割合は9.9%でした。相続人の10人に1人が相続税を支払ったことになります。つまり10人のうち9人は相続税を納付する必要がなかったということです。

多くの人が相続税を免れるわけ
相続税には基礎控除があります。
基礎控除額=3,000万円+600万円✖️法定相続人の数
例えば、相続人が配偶者と子2人の計3人の場合は、「3,000万円+600万円✖️3人」で基礎控除額は4,800万円となります。
相続した財産の総額が基礎控除額を超えなければ、相続税は発生しません。
遺産の平均額が3,000万円前後だとすると、相続人が最小の1人の場合でも基礎控除額は3,600万円(3,000万円+600万円)になります。
遺産額が基礎控除額よりも少ないということになり、相続税は発生しません。
10人に9人が相続税を支払っていないのは、多くのケースで遺産額がこの基礎控除額を超えていないからです。
支払う人が増えている背景
一方で近年、相続税を支払う人は増加傾向にあります。
上記グラフ「課税割合の推移」を見ると、2019年に相続税を納付した人の割合は8.3%でしたが、その後割合は増え続け、2023年には9.9%に達しました。
この背景にあるのが、不動産価格や株価の上昇です。
国土交通省が公表している不動産価格指数によると、2019年12月と2024年10月を比べると不動産価格は約5年で1.2倍に増加しています。(*1)
また株価も、2019年末と2024年末の日経平均株価を比べると1.7倍に増えています。(*2)
このように資産価値が上昇していることで、相続財産の評価額も増加していることが、相続税を納税している人が増えている背景にあると考えられます。
ちなみに相続税を納付した人のデータを見てみると、被相続人1人あたりの課税価格(=相続財産)は1億3,891万円、相続税額は1,930万円でした。また財産の内訳では不動産(土地と家屋)が36%を占め、現金・預貯金の35%を上回りました。
相続では不動産対策が大切
これまで見てきたように、相続財産の大きな割合を占めているのは不動産です。
そして不動産は一般的に分割するのが難しいとされる財産です。
相続にあたっては、不動産の分け方について事前に準備しておくことが、相続をスムーズに進めるために大切だといえそうです。
「争続」も増えている
では相続がスムーズにいかず、財産争いが起きてしまった場合、いわゆる「争続」のデータを見てみます。
2023年の司法統計によると、遺産分割事件数は13,872件でした。推移を見てみると13,000件前後で横ばいのように見えますが、ここ数年に注目するとやや増加傾向にあると言えそうです。

「争続」の8割は遺産5,000万円以下
争続が起きている場合、いったいいくらの遺産をめぐって相続争いが起きているか。
興味深いデータがあります。

これは遺産分割事件のうち2023年に認容・調停が成立した7,297件の内訳を遺産の価額別に分析したものです。
遺産が1,000万円以下が34%、5,000万円以下が44%となっています。これを合わせると78%。つまり遺産額5,000万円以下が約8割ということになります。
巨額な遺産を持つ家ではなく、意外と身近なところで「争続」は起きているのです。
身近な「争続」への備えが大切
これまで見てきたデータから、相続に備えた事前の準備を進めて、いざ相続発生というときにもめないように対策を講じておくことが重要だということがわかります。
特に分割するのが難しいわりに遺産の中で大きな割合を占める不動産について、対策を講じておくことが大切だといえます。

*1:国土交通省「不動産価格指数」住宅、2019年12月=113.7、2024年10月=139.3
*2:日経平均株価月末終値、2019年12月=23,656.62円、2024年12月=39,894.54円