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不動産の生前贈与 3つの注意点

相続対策の有力な手段として「不動産の生前贈与」は注目されています。

確かに上手に活用すれば相続税の負担軽減や相続トラブルの回避が期待できます。
しかし、一方で「知らなかった」では済まされないポイントも存在します。
特に税務上の制度との関係を十分に理解しておかないと、結果的に税金を多く支払ってしまったということにもなりかねません。

今回は、不動産の生前贈与で注意したい3つの重要ポイントをわかりやすく解説します。


不動産を生前贈与する背景

生前贈与自体の5つの「落とし穴」については前回、詳しく解説しました。
   →「生前贈与 5つの『落とし穴』と回避法」

今回は不動産の生前贈与に絞って考えていきます。
まず不動産を生前贈与するのはどのような場合でしょう。

相続後のトラブル回避

自分が渡したい、引き継いでもらいたい人に確実に譲渡することができます
相続後の遺産分割になってしまうと、遺言状を書いていたとしても、相続人どおしの思惑で、自分の思いどおりの分け方ができないかもしれません。
またあらかじめ譲渡しておくことで、意思も明確になり不要な相続トラブルを避けることにつながるかもしれません。

相続税の負担軽減

相続財産を事前に減らすことになるので、活用次第では相続税の負担軽減につながることも考えられます。
特に将来的に価値が大きく上昇することが見込まれる不動産であれば、その効果は大きいといえます。
ただ、将来の価値がどうなるかを見通すことは極めて困難ではありますが。

さらに資産価値の大きな不動産では贈与税の考慮も必要です。結果的に支払った税金が多くなってしまうということは避けたいものです。

こうした背景を踏まえて、不動産の生前贈与をする際に、注意したいことを3つのポイントから考えます。

注意点① 小規模宅地等の特例

生前贈与された土地については、相続が発生した際に「小規模宅地等の特例」が使えません
小規模宅地等の特例は、土地の評価額を大きく減らすことができるので、相続税を軽減するために活用されます。
例えば、自宅の土地(330㎡まで)や賃貸物件の用地(400㎡まで)については80%も評価額を減らすことができます。

自宅の土地の相続税評価額が5,000万円の場合に、この特例が適用されると、
5,000万円×20%=1,000万円 となり、相続税の負担が大きく軽減されることになります。

つまり将来、相続が発生した時に小規模宅地等の特例が適用される可能性がある土地を生前贈与するのは、おすすめできないということです。

逆に考えると、この特例が適用されないことがわかっているのであれば、生前贈与する意味はあるということです。
例えば自宅の場合は、相続人が同居していて相続後も居住することが特例の要件となるので、同居していない人に贈与するようなケースです。

注意点② 配偶者への贈与

配偶者に居住用不動産(自宅など)を贈与する際に、「贈与税の配偶者控除」を使うと、最大2,000万円(+基礎控除110万円)の贈与税の非課税枠があります。
この制度は一生に一度だけ使うことができます。

一方、相続時に配偶者には、1億6,000万円または法定相続分まで相続財産が非課税になる「配偶者の税額軽減制度」があります。

配偶者に生前贈与をする際には、この2つの制度をよく考慮して判断することが重要です。
「早めに贈与しておこう」と安易に考えてしまうと、相続時の大きな非課税枠をムダにしてしまうかもしれません。

例えば、夫が5,000万円の自宅を妻に贈与した場合、「贈与税の配偶者控除」を適用すると2,110万円が非課税となり、残りの2,890万円に対して贈与税が課税されます。
一方、夫が亡くなり妻が自宅を相続する場合には、全額が非課税となる可能性があるということになります。

それでも、配偶者に早く譲渡しておきたいという事情があるかもしれません。
いずれにしても贈与税・相続税について制度などを十分に比較し、シミュレーションもしたえうで判断することが大切です。

注意点③ トリプル+αの税負担

不動産を生前贈与すると、受贈者(贈与を受けた人)には贈与税がかかるのはもちろん、不動産取得税登録免許税(登記にかかる税)といった税金も発生します。いわば「トリプル税負担」です。

さらに、贈与されたことで受贈者がその不動産の所有者となるため、固定資産税の支払いも発生します。

不動産の評価額が高ければ、贈与税の税率も高いものが適用されます。
評価額は相続税評価額(土地は路線価、建物は固定資産税評価額)に基づきますが、事前に評価額をしっかり確認することが重要です。

例えば、3,000万円の不動産(宅地2,000万円+建物1,000万円)を父が子に贈与した場合の簡略な計算例です。
・贈与税:1,035万円
・不動産取得税:60万円
・登録免許税:60万円
・固定資産税:年間10数万円(エリアによる)

このように受贈者(上の例では子)の税負担が大きいということを十分に認識したうえで、贈与するかどうか判断することが必要となります。


まとめ

まとめ 不動産の生前贈与は、適切なタイミングと方法で行えば大きなメリットがあるかもしれません。
しかし、税務上の制度やルールを正しく理解していないと、かえって損をしてしまうことにもなりかねません。

今回解説した3つの注意点などを押さえたうえで、税理士などの専門家に相談して、ご自身やご家族にとって本当に適切な方法を選ぶようにしましょう。

<用語集>

小規模宅地等の特例 贈与税の配偶者控除 相続税の配偶者控除

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